ワールド・モード・ホールディングス株式会社のプレスリリース
https://ida-mode.com/reports/job-change-income-line-2026/
株式会社iDA(アイ・ディ・エー、以下iDA/本社:東京都渋谷区、代表取締役:堀井謙一郎)は、全国23拠点(北海道〜沖縄)の派遣ネットワークを通じて蓄積した、就業スタッフの支払実績データをもとに、ファッション・ビューティー業界の人材市場動向を可視化する調査レポート「iDA ファッション人材レポート vol.2」を発行しました。

iDAの転職データ分析の結果、販売職の転職では年収400万円を境に転職理由やキャリア志向が大きく変化することが分かりました。年収400万円未満では「収入向上」が主要な転職動機である一方、400万円以上では「役職」「本社職」「専門職」などキャリア形成を重視する傾向が強まります。
年収400万円を境に転職理由が変化
転職決定者を転職前の年収帯で分けると、希望年収の出方が帯ごとにはっきり分かれます。転職前250万円未満の層では 98.3%が現在より高い年収を希望し、その希望額は中央値で+100万円。対して転職前500万円以上の層では、 年収アップを望む人は35.0%にとどまりました。分岐点は400万円台です。転職前400〜500万円の帯で、年収アップを希望する人の比率がはじめて半数を割り込みます。 ここを境に、求職者の希望の中心は「年収を上げる」から「年収は維持できればよい」へ移ります。 この折れ目を、本レポートでは「年収400万円の転換線」と呼びます。
この差が採用側に示すのは、年収提示の効き方が相手の現在の年収で変わるということです。転職前400万円未満の層には、 提示年収の上積みがそのまま動機に接続します。この帯では約7割から9割超が年収アップを望んでおり、 望む額も転職前年収が低いほど大きくなります。
対して400万円以上の層では、年収の上積みは決め手になりにくくなります。500万円以上の帯では46.7%が現在より 低い希望年収を出しており、希望年収の中央値も転職前と同額の600万円です。この層は年収以外の条件も重く見て動いている とみられます。その条件が何かは、第4章で決定した求人の役職・業務内容から確認します。

決定年収でも、同じ場所で反転
希望年収だけでなく、実際に決まった年収でも、同じ反転は起きているのか。ここでは成約管理データの決定年収を使い、 年収申告と決定年収の双方が確認できた層(転職決定者の約7割)で確認します。
注記: 決定年収は成約管理データの決定年収項目。1人に複数の成約レコードがある場合は、決定日にもっとも近いレコードを採用しています。 分析対象は年収申告と決定年収の双方が確認できた層(転職決定者の約7割)。決定年収のカバレッジは決定者の92.2%です。
400〜500万円の帯で、決定年収が転職前を上回った比率は42.3%と半数を割ります。決定年収から転職前年収を引いた差も、 中央値で16万円のマイナスでした。希望額に到達した決定も33.1%と、3人に1人にとどまります。
500万円以上の帯では、決定年収が転職前を上回った比率が20.0%まで下がり、差の中央値は80万円のマイナスでした。 対して300万円未満の帯では、上回った比率が97.8〜100%、差の中央値も+48万円から+100万円の上昇です。
希望年収と決定年収は同じ人の二つの数字であり、希望が決定に影響するため、互いに独立した証拠ではありません。 それでも、申告時の希望だけでなく実際に成立した年収でも同じ400万円台で流れが反転していることは、 400万円台での分かれ目が希望の出し方の癖にとどまらないことを示しています。
年収400万円以上では、現場販売以外で転職が決まる比率が上がる
転職前年収400万円を境に変わるのは、年収の動きだけではありません。決定した求人の役職・業務内容にも、 同じ境界で変化が見られます。年収申告と決定求人の職種の双方が確認できた層(転職決定者の約8割)について、決定求人の職種タグを 「現場販売・接客職」「店長・SV・管理職」「本社・専門職」「その他」の4群に分類しました。 転職前年収帯が上がるほど、現場販売以外で決まる比率が高まります。
店長・SV・管理職と本社・専門職を合わせた比率は、400万円未満でわずか11.1%。400〜500万円で33.7%、 500万円以上では50.4%——約半数が現場販売以外で決定しています。
この傾向は、切り口を変えても崩れません。販売経験者への限定、本人が登録した希望職種、求人タイトルの文字列という 三つの切り口で確認しても、同じ形が現れます。とくに本人の希望職種で同じ形が出ることから、現場販売の外へ向かう志向は、 決定の結果だけでなく、動く前の希望の段階から現れていると言えます。
現場販売の外へ移ることは、減収と引き換えではありません。転職前年収400万円以上で見ると、管理職・本社専門職で 決まった比率は、減収を受け入れた決定で35.5%、年収を維持・上昇させた決定では50.0%と、 むしろ後者の方が高くなっています。
なお、この分類は求人の職種タグ(複数タグ)をキーワードで機械的に分類した近似値です。複合タグは 本社・専門職>管理職>現場販売の順で上位の区分を優先しており、境界に位置する事例が含まれます。
転職が決まっているのは「販売経験を持つ20代」が中心
転職が決まっているのは、どんな人材なのか。ここからは年収帯を問わず、決定者全体を年齢と経歴で見ます。年齢では、25〜29歳が34.8%で最も多く、25歳未満の18.1%と合わせて、20代が全体の52.9%を占めます。 一方で45歳以上も12.4%おり、若手が中心でありながら、ベテラン層の転職決定も一定数あります。
経歴では、業界内・近接職からの移動が主軸です。経験職種を登録している層(転職決定者の約7割)のうち、8割超が販売・接客・店長のいずれかの 経験を登録していました。異業種からの大幅な転身ではなく、販売・接客の経験を持つ人が、同じ業界の別のブランドや職務へ 移っている構図です。
年齢と経歴を重ねると、決定者の中心は「販売経験を持つ20代」です。そのうえで第2章から第4章が示したとおり、 転職前年収が400万円を超える経験者層では、動く理由が年収から役職・業務内容へと重心を移します。
決定者の過半数は「在職中に動く」転職潜在層
転職決定者の55.3%は「社会人(在職中)」でした。次いで社会人(離職中)が18.9%、フリーターが9.9%。 つまり転職が決まる人材の過半数は、いま職に就きながら次を探している転職潜在層です。 「今すぐ動ける人」だけを想定した採用活動では、この層を取りこぼすおそれがあります。
在職中と離職中では、年収への向き合い方も異なります。両者の現在年収は中央値でともに350万円と同水準です。 それでも年収アップを望む比率は、在職中67.6%に対し、離職中は56.3%と約11ポイント低くなります。 在職中の層はいまの年収を上回る条件を求め、離職中の層は年収の上積みよりも早く確実に決まることを 優先しているとみられます。
年収400万円未満は「年収」、400万円以上は「年収+役職・業務内容」
ここまでのデータが示すのは、販売職の中途採用が、年収帯によって異なる論理で動いているということです。希望年収、実際の決定年収、決定した求人の役職・業務内容。2025年4月〜2026年8月の転職決定では、 この三つがいずれも転職前年収400万円台で分かれていました。
この一致は、採用側に二層の設計を要請します。転職前年収400万円未満の層(年収を申告した決定者の6割強)には、 提示年収の上積みがそのまま効き、「いくら上がるか」を具体的に示す年収設計が母集団形成の起点になります。 一方、400万円を超える経験者層に効くのは、年収の上積みだけではありません。決定求人は転職前年収が上がるほど 現場販売の外へ広がり、500万円以上では約半数に達します。「何を任せ、どこへ行けるか」——任せるポジションと キャリアパスを示す役職・業務内容の設計が、年収と並ぶ判断材料になります。
役職・業務内容の提示は、年収抑制の代替手段ではありません。第4章のとおり、管理職・本社専門職で決まった比率は、 減収を受け入れた決定(35.5%)より年収を維持・上昇させた決定(50.0%)の方が高くなっています。 役職・業務内容の設計と年収設計は、二者択一ではなく組み合わせるものです。年収帯、役職・業務内容、局面の三軸で 採用設計を組み立てることが、中途採用で人材を得るうえで有効だと考えます。
まとめ|「販売職一律」の終わりと、多軸設計への移行
販売職の中途採用を、すべての年収帯で同じ訴求のまま進めると、転職前年収400万円以上の人材を取り逃すおそれがあります。 年収を上げれば動く層と、年収だけでは動かない層は、希望年収でも実際の決定年収でも、 転職前年収400万円を境に分かれていました。
iDAは、業界に特化した人材紹介を通じた転職の一次データとして、希望年収・実際の決定年収・決定先の役職・業務内容 という三つの系列で、この「年収400万円の転換線」を今後も定点観測していきます。誰が、どの年収帯から、 何を求めて動き、実際にいくらで、どんな役職・業務内容で決まるのか。その数字をもとに、 ブランドの人事・採用責任者と共に採用設計を組み立てていきます。
レポートの全文はこちらからご覧いただけます。
https://ida-mode.com/reports/job-change-income-line-2026/
調査概要
概要iDAの人材紹介を通じて2025年4月1日から2026年8月31日までに転職が決まった1,000人超 (転職決定者)の年収(希望年収・決定年収)と、決定した求人の役職・業務内容を分析しました。 年収の分析対象は申告のあった約8割(決定年収は約7割)。本調査はiDAの人材紹介を通じた転職決定者のデータ範囲における 観察であり、販売職の転職市場全体の統計推計ではありません。
【株式会社iDA について】 https://www.ida-mode.com/
1999年3月創業。ワールド・モード・ホールディングスのグループ企業であり、ファッション・ビューティー業界を中心にクライアントニーズに応じて人材紹介、派遣、教育、店舗運営などトータルメニューでサービスを提供。求職者のキャリアプランやライフスタイルに沿った提案を行い、年間約1800人の社員転籍等を実現しています。

