アパレル業界の最新景況レポート(2026年8月)
株式会社帝国データバンクのプレスリリース

株式会社帝国データバンクは、「アパレル業界」の景況感について調査・分析を行った。
SUMMARY
2026年6-8月のアパレル業界のDI(景況感)は3カ月連続で36を下回り、2022年秋(9-11月)以来の低水準となり、需要低迷が鮮明となった。物価高による生活防衛意識の高まりを背景に、家計の衣料品支出は大きく減少し、消費者の選別消費も進行した。一方で、猛暑の長期化に対応し、クリアランスセールの後ろ倒しや正価販売期間の延長といったMD改革を進める企業もみられ、今後は気候変化に対応した実需起点のMDへの転換が求められる。
[注]
景気DIは、TDBが算出する全国企業の景気判断を総合した指標。50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる。
アパレルDIは、「成人男子・少年服製造」「成人女子・少女服製造」「男子服卸売」「婦人・子供服卸売」「男子服小売(製造小売)」「婦人・子供服小売」などの衣類関係で景気DIを算出。
2026年夏のアパレルDI悪化、全産業の景気DIとの差が拡大
2026年8月における国内アパレル業界の景況感を表す景気DI(50が好不況の分かれ目)は、35.2と低水準となった。全産業の景気DI(44.6)との差は9.4ポイントと大きく、他産業に比べ、アパレル業界の景況悪化が鮮明となった。また、2026年6-8月でみると3カ月連続で36を下回り、2022年秋(9〜11月)以来の低水準となった。
2026年1-8月の推移をみると、季節ごとの需要の波と消費者のマインド変化が浮き彫りとなった。年初は冬物衣料のクリアランスセールや訪日外国人需要に支えられ、1月(37.3)から2月(37.9)にかけて小幅に回復した。しかし、春物商戦が本格化する3月は、天候不順の影響もあり35.6と、2月から2.3ポイント低下した。続く4月(36.2)、5月(37.2)には大型連休の人流回復を背景に持ち直しの兆しをみせたものの、春物需要の期間が短かったことや生活防衛意識の高まりから、利益率の高い定価(プロパー)商品の伸び悩みがみられた。
夏場に入ると需要減退はいっそう顕著となった。6月に35.3へ低下した後、7月には33.9(前年同月比3.2ポイント減)まで急落した。この34.0を下回る水準は、コロナ禍による行動制限解除の過渡期にあった2022年9月(32.3)以来、約3年11カ月ぶりの低水準となる。8月は35.2と前月から1.3ポイント持ち直したものの、2022年秋以来の低水準にとどまった。
こうした夏場の急失速、とりわけ7月の落ち込みを招いた要因として、企業からは「酷暑による客足の鈍り」「クリアランスセールの不振」が挙げられた。連日の記録的な猛暑によって日中の外出そのものが抑制されたことに加え、物価上昇による生活防衛意識の高まりも衣料品需要を下押ししたとみられる。
また販売面では、企業ごとの対応力の差もみられた。近年の夏季長期化を受け、大手百貨店や有力アパレル企業の一部では、正価販売期間を確保するため、クリアランスセール開始時期の後ろ倒しや盛夏商品の販売期間延長といったマーチャンダイジング(MD)改革が進められていた。実需期に利益率の高い商品を販売し、セール依存を見直そうとする動きも広がりつつある。
一方で、他社に先駆けて限られたパイを囲い込もうと、6月下旬から先行セールを仕掛けて優位性を得ようとする動きも依然として根強い。特に資金繰りや早期の在庫消化を優先せざるを得ない中小アパレルや従来型のSCテナントでは、長年続く暦ベースの慣習に加え、先行値引きによる客数確保を狙う傾向が顕著だった。しかし、2026年夏のように7〜8月に異例の猛暑が長期化した局面では、この先行セールがかえって「盛夏実需のピークに粗利を削って販売し、8月には売るべき夏物在庫が枯渇する」という悪循環を招き、利益の圧迫と景況感の悪化に拍車をかける結果となった。

猛暑でも衣料品需要は伸びず、家計支出は大幅減
一方で、市場全体では衣料品需要そのものの低迷も続いた。経済産業省の「商業動態統計」によると、織物・衣服・身の回り品小売業の販売額は、2026年6月に前年同月比14.4%減と大幅なマイナスとなった。7月も同6.6%減と前年実績を下回り、減少傾向が続いた。加えて、総務省の「家計調査」においても、二人以上世帯の「被服及び履物」への実質支出は、2026年6月に前年同月比18.5%減となり、家計の衣料品支出の落ち込みが鮮明となった。
例年通りであれば、気温の上昇とともに盛夏衣料への需要が高まる時期だが、家計の衣料関連支出は大幅に減少しており、物価上昇が続くなか、食料品や光熱費など生活必需分野への支出が家計を圧迫していることが背景にあるとみられる。その結果、衣料品は支出を先送りしやすいカテゴリーとして消費が抑制される状況が続いた。
加えて、消費者の購買行動における「選別志向」の定着も大きい。コロナ禍以降の外出機会の見直しや近年の継続的な物価高に伴い、消費者は「安いから買う」という単純な値引き訴求には反応しにくくなっており、リセールバリューや着用頻度まで見越した「本当に必要な1着」を吟味して購入する傾向が定着している。特に可処分所得の伸び悩みが続く2026年においては、単なる早期のクリアランスセールによる需要喚起策は限界を迎えており、価格訴求のみでは販売数量の拡大に結びつきにくい構造が浮き彫りとなっている。
気候変化とECシフトに対応したMD・販売改革が求められる
近年、気候変動の影響により猛暑の長期化が進み、四季というよりも「夏と冬の二季化」に近い気候構造へと変化しつつある。こうした環境変化のなか、従来の暦を前提とした「7月に夏物を売り切り、晩夏から次シーズンへ移行する」という販売スケジュールは、消費者の実際の需要との乖離を生みやすくなっている。
9月以降の秋冬商戦に向けては、気候変化に対応しきれていない従来型のMD運営を見直し、実需に即したスケジュールへ転換できるかが重要なポイントとなる。9月に入っても30度を超える残暑が続くなか、「秋の訪れ」を前提に重厚なアウターやウール製品を過度に早期投入することは、在庫の滞留や値下げ販売の増加を招き、利益率の低下につながる可能性がある。
そのため、秋らしい季節感を演出しながらも、通気性や吸汗速乾性に優れた晩夏・初秋向け商品の供給を継続し、寒暖差に対応できるカーディガンや薄手の羽織りなど、実用性の高いアイテムを販売の中心に据える必要がある。一方で、ウールコートや本格的なダウンなどの重防寒衣料については、実際の気温低下に合わせて投入時期を柔軟に後ろ倒しできるよう、生産・物流体制を再編することが求められる。
また、ネット通販(EC)との連携強化も重要である。実店舗とECの在庫を一元管理し、店頭で商品を確認・試着したうえでECから購入・配送できるショールーミングへの対応や、気象データと連動したデジタル広告・特集配信による需要喚起など、店舗とECの垣根を越えたオムニチャネル戦略の推進が不可欠となる。
