貝印株式会社のプレスリリース
グローバル刃物メーカーの貝印株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長兼COO:遠藤浩彰)は、11月6日(木)に、 Shibuya Sakura Stageにて「KAI Hat & Head-piece Competition 2025 最優秀賞授賞式」を開催しました。イベント後半では、ファッションジャーナリスト向 千鶴さんとファッションデザイナー丸山 敬太さんをゲストに迎え、 KAI Hat & Head-piece Competitionの審査員も務められたHat&Head-piece designerの日爪 ノブキさんとトークショーを行いました。

「KAI Hat & Head-piece Competition」について
トークショーでは向さんより、今回のコンペティション受賞作品のクオリティの高さの話題から始まりました。丸山さんは作品について、「どの作品も1つの宇宙のようで、頭に被るという枠の中で、自由なデザインが生み出されていました。五感全てを使って帽子を作っていると感じ、私自身もとても刺激を受けました。」と述べました。また、日爪さんからは、「今年4回目を迎えて、より色々な要素が作品に盛り込まれているなと感じました。」と語り、「コンペティションは、自分自身のクリエイティビティを客観的に見つめ、新しい才能が生まれる機会なので、参加するだけで得るものはたくさんある。」とお話ししました。
次に、最優秀賞者に贈呈されるパリ研修に関して、「本当に羨ましい研修旅行で、その経験が今後にもかなり活かされそうですね。」と向さんからお話いただき、お二人にとってのパリについて伺いました。日爪さんは、「パリは世界中の人々が憧れる街で、全く違う場所の空気を吸うことで新しい化学反応が起きますね。」と、パリ研修に行くことへの意義を熱く語りました。
また、丸山さんからも初めてパリに行った時のエピソードを語っていただき、「携帯もない時代だったけど、街の美しさに感動したことをよく覚えています。ワクワクした感情は、今でも忘れられず、パリに行くときはいつもドキドキしています。」と語られました。


越境が生むクリエーションについて
続いて、向さんからは、今年のテーマでもある「越境」に関してトークが繰り広げられ、お二人の体験や、創造性への影響について語っていただきました。
向さんから「皆さんの中の越境とは?」という質問に対して、日爪さんは「越境は“運命的”」と答えました。「もともと洋服デザイナーを目指していましたが、ブロードウェイミュージカルにて、ヘッドピースの制作を独自で手掛けたことをきっかけに、『人生が帽子をやれと言っている』と決断し、洋服から帽子へと領域を越境しました。その後、日本からフランスへ拠点を移すという国境超えを果たしました。」と語りました。また、丸山さんからは、ファッションの本質について「そもそも境がない、無くありたいですね。」と述べ、「デザイナーの仕事は、誰かの問題や目的に対して解決していくことだと思っています。」と伝えました。「自身のブランドの軸を保ちながらも、『これ超えちゃった方が面白い』という姿勢で、空間や他分野へ積極的に『越境』している」と説明しました。さらに、「キャリアを重ねるほど、新しいものが飛び込んできた時に、自分がリニューアルされる感じがする。」と話し、コラボレーションを通じてクリエーションの幅を広げていると語りました。
日爪さんが貝印と共同開発した「O(オー)について」
そして、日爪さんと貝印が共同開発した縫製ハサミ「O(オー)」について、デザイナー目線で道具の重要性が語られました。日爪さんは、「O(オー)」の特徴として、「ファッションの分野では、多くの素材を扱うため、1つのハサミで制作することは非常に難しいので、用途に合わせて使用できるよう6丁セットにしました。」と説明。また、ハサミの特長的な形状にも言及し、「制作する上で、バランスと安定は不可欠。開発過程でもかなり苦戦した部分でした。」と明かしました。
丸山さんも縫製ハサミに関してのこだわりを、「ハサミは手の延長であり、頭で考えている形を作る伝達者なので、こだわりは強いです。」と語られました。また、「絶対他人には触られたくないハサミを1本持っています。」と、デザイナーならではの縫製ハサミへの強い思い入れを明かしました。実際に向さんと丸山さんも事前に「O(オー)」で試し切りしていただき、「フィット感が良く、シーザーハンズのようでした。」と、完成度の高さを評価いただきました。


クリエイティビティとビジネスの越境
その後トークはクリエイティビティとビジネスへ移りました。日爪さんは、帽子業界についての話にも触れ、「帽子業界は衰退産業であり、トレンドに左右される弱みがあります。帽子の世界で生きていくには“誰にもできない領域のこと”をやることが重要で、これが価格競争に巻き込まれない唯一の方法です。」と強く語りました。
また、丸山さんからは、「僕自身受け身なことが多いですが、デザインは課題解決の1つだと思っています。」と明かし、「自分のクリエーションを軸としつつも、お客様が求めていることにどう応えるかが重要だと思っています。一点ものから大量生産まで、規模が変わってもクリエイティブで答えることは変えたくないポイントの1つですね。」と語りました。そのお話しから、向さんは「丸山さんの話を聞いて、一点ものでも量産ものでも、作り手の気持ちはどちらもオートクチュールなんだなと思いました。幸せなことですね。」と応えられました。
来年の開催に向けて丸山さん、日爪さんよりメッセージ
また最後には、来年の開催にも触れ日爪さんからは、「目の前のチャンスを拾うことができるかもしれません。迷ったら必ず応募してください。」と熱いメッセージを送りました。丸山さんからも「コンテストは勝ち負けだけがゴールではなく、自分が成長していくためのツールです。皆さんの才能が上がり、日本のファッション界に新しい才能が出ることが大切です。自分のクリエーションの幅をどんどん広げていってほしいです。」と語りました。

登壇者 プロフィール

日爪 ノブキ氏
文化服装学院アパレルデザイン科を首席で卒業後、2004年に渡伊。イタリアのメーカーでアンダーウェアのデザインを手がけ、コレクションを発表する。帰国後は舞台芸術や音楽の現場で、国内外のアーティストたちのために帽子・ヘッドピースを制作。アーティスト名義「NOBUKI HIZUME」としての活動も開始し、2009年にフランスへ拠点を移す。以後、数々のグランメゾンのために、パリ・コレクション用の帽子を手がけ続けている。
2019年には、フランスの職人にとって最高の栄誉とされる国家最優秀職人章(M.O.F.)に認定。同年、帽子ブランド「HIZUME」を立ち上げる。
COMME des GARÇONSおよびCOMME des GARÇONS Homme Plusとのコラボレーションを通じてパリコレクションにて作品を発表。LOEWEのコレクションでは、伝統的な帽子作りの技術を衣服制作へと昇華させた挑戦も行っている。MBS『情熱大陸』出演など、現在もっとも注目される帽子デザイナーの一人である。

丸山 敬太氏
ファッションデザイナー。
1965 年東京・原宿生まれ。
1987 年に文化服装学院ファッション工科・アパレルデザイン科卒業。
1994年 ’94 -’95秋冬東京コレクションにて「KEITAMARUYAMA TOKYO PARIS」としてデビュー
1997年’98春夏パリコレクションデビュー
2005年パリに初のショップをオープン
2013年日本航空(JALグループ)客室乗務員・地上接客部門の制服をデザイン
2016年青山本店をコンセプトストア「丸山邸」としてリニューアルオープン
2024年 ブランド30周年を迎え、「丸山百景」プロジェクト及び、「ケイタマルヤマ遊覧会」を開催。

向 千鶴氏
横浜市出身。東京女子大学卒業。デニムアパレル会社エドウイン営業職、日本繊維新聞社記者を経て 2000 年に INFAS パブリケーションズ入社。記者として主に国内外のデザイナーズブランドの取材を担当。2015 年に「WWD ジャパン」編集長に、2020 年 4 月に執行役員「WWDJAPAN」編集統括サステナビリティ・ディレクターに就任。記者業務に加えて、ファッションスクールでの講義、省庁の有識者委員なども通じてファッション産業のサステナビリティ・シフトに尽力。2024 年 8 月に独立し、CRANE&LOTUS を設立。引き続き「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクターを務めつつ、活動の領域を広げている。
貝印株式会社
1908年、刃物の町として有名な岐阜県関市に創業。現在、生活に密着した刃物を中心とするカミソリ、メンズグルーミング、ツメキリなどの身だしなみやビューティーケア、包丁をはじめとする調理・製菓、医療用など1万アイテムにもおよぶ商品を展開し、商品の企画開発から生産、販売、物流までの一連を行っているグローバル刃物メーカー。
本社:東京都千代田区岩本町3-9-5
代表取締役社長兼COO 遠藤 浩彰 https://www.kai-group.com
本件に関する読者の皆様からのお問い合わせ先
貝印株式会社 お客様相談室
〒101-8586 東京都千代田区岩本町3-9-5
TEL:0120-016-410 (フリーアクセス・ひかりワイド)

