久留米絣×豊橋前掛け、シャトル織機の挑戦を世界へ ― パリ実績を経て東京で報告会を開催。来春は北米展開へ

坂田織物が糸を提供、エニシングが企画。伝統的なシャトル織機で織り上げたワークジャケットが、国際市場で新たな評価を得ています。

有限会社 坂田織物のプレスリリース

今回産地間コラボで開発したワークジャケット「KASURI JACKET]

今回の取り組み シャトル織機の産地間コラボレーションとサスティナブル

久留米絣(福岡)と豊橋前掛け(愛知)が連携し、伝統的なシャトル織機を活かしたワークジャケット「KASURI JACKET」を開発しました。企画はエニシングが中心となり、これまでパリで高く評価されてきたジャケットのデザインを基盤にしています。そこに坂田織物が糸や素材の提案を行い、久留米絣の魅力を織り込んだ生地づくりで協力しました。さらに製織準備で生じる「括り糸」(絣模様を染め分けるために使う糸)を副資材として活用するなど、サステナブルな工夫も加わり、豊橋前掛けの堅牢な帆布文化とも融合しています。

2025年9月にはエニシングが先行してフランス・パリの「Maison et Objet」で発表し、約35着(150万円)の受注を獲得。現地では「アルチザン性」と「アフォーダブルな価格帯が時代のニーズに合っている」との評価を受けました。10月14日にはエニシング主催の東京報告会が開かれ、フランスでの体験や市況解説、開発に込めた思いをエニシングと坂田がともに語ります。

さらに2026年1〜3月には坂田織物が主体となり、フロリダでのPOP UP、ニューヨーク・ネペンテスNYでの展示販売、パーソンズ美術大学での特別授業を予定。日本の工芸が国際市場で実用性と文化的価値を発揮する姿を示します。

縮小するシャトル織機の現状と再評価

かつて国内に約2万5千台あったシャトル織機は、2022年には1万台弱まで減少しました。効率化の波に押され衰退する一方で、柔らかい風合いや美しいセルビッジといった独自性が再評価され、世界のブランドから注目を集めています。

エニシング 豊橋工場
坂田織物 工場

※いづれの工場の織機も100年近く前に作られたシャトル織機によって布作りがなされています。

使用した括り糸とは

括りは絣模様を生む工程で、糸の一部を木綿糸で縛り染料を防ぐことで模様が浮かび上がります。この作業で生じる不要な「括り糸」は従来廃棄されてきましたが、本プロジェクトでは副資材として活用し、アップサイクルを実現しました。

エニシングによる Maison et Objetの出展の様子

国内報告会(2025年10月14日・東京)

東京・新宿にて開催する報告会では、以下のように登壇者ごとに役割を分担して報告します。

フランスでの体験報告:エニシング(西村社長)
 パリ・Maison et Objetでの展示会参加を通じて得られた成果や現地でのエピソードを共有。

市況解説・評価:宮浦晋哉 氏(キュレーター)
 国際見本市におけるマーケット動向や、今回のプロジェクトが持つ文化的・社会的意義を解説。

開発に至った思い:坂田織物(坂田和生)&エニシング
 産地間コラボレーションを実現した背景や、ワークジャケット開発に込めた意図を語ります。

北米での今後の展望:坂田織物(坂田和生)
 来春予定しているフロリダPOP UP、パーソンズ美術大学での特別授業、ネペンテスNYでの展示販売など、今後の挑戦を発表。

さらに会場では、新作「KASURI JACKET」の試着・受注会を実施し、参加者は実際にジャケットを手に取り、その質感や着心地を体験することができます。

社会的意義

伝統技術の持続可能性
 シャトル織機産業の縮小は、地域経済や技術継承に直結する深刻な課題です。今回の取り組みは「国際市場での実績づくり」という形で、その存続に新しい可能性を提示します。

産地間連携による新モデル
 久留米と豊橋という異なる地域が連携すること自体が、日本の伝統産業における新しいモデルです。産地間の垣根を越え、互いの強みを組み合わせることで、市場価値を高める実例を示します。

グローバル市場での文化発信
 フランス・パリでの実績、そして今後の北米展開を通じて、「日本の工芸が海外の消費者にどう受け入れられるか」を具体的に示すことができます。これは国内にとっても大きな学びであり、工芸の未来像を描く上で重要なデータとなります。

解説コラム:シャトル織機とは

シャトル織機は、舟形の「シャトル」によこ糸を巻き取り、それを左右に往復させて生地を織り上げる伝統的な織機です。
現代のエアジェットやレピア織機に比べ効率は低いものの、糸にかかる負荷が少ないため、繊維本来の柔らかさを残したまま織ることができます。その結果、肌触りが良く、耐久性に優れ、美しいセルビッジが生まれます。また、シャトルの揺らぎによって生じるわずかな不均一さが、工芸品らしい温かみを付与します。
近年はこの特性が「クラフトの魅力」として再評価され、世界中のブランドが希少な生地として探し求めています。

開催概要(東京報告会)

イベント名
新作「KASURI JACKET」試着・受注会 & ヨーロッパ遠征報告会

主催

株式会社エニシング(代表取締役 西村社長)

キュレーション
宮浦 晋哉 氏(キュレーター)

ゲスト
坂田 和生(有限会社坂田織物 代表)

日時・会場

第一部:17:30-18:30|ANYTHING新宿御苑店(東京都新宿区新宿1-11-17 第2KSビル1階)
 ・新作試着・受注会(イベント限定価格 税込48,400円)
 ・トークセッション(エニシング西村社長、ゲスト:坂田和生)

第二部:19:00-21:30|ガーデンキッチン御苑EAST(東京都新宿区四谷4-25-13)
 ・フランスでの成果報告(西村社長)
 ・市況解説(宮浦氏)
 ・開発に至った思い(坂田&エニシング)
 ・北米展望(坂田)
 ・軽食付き交流会(参加費 一般5,000円/学生3,000円/定員20名)

申込先 https://anything.ne.jp/products/europe-tour-report-meeting

取材のお願い

本リリースは、10月14日の東京報告会へのご来場を広く呼びかけるものです。
当日はパリでの成果に加え、来春の北米展開計画も発表します。
さらに来春は、「日本の伝統工芸が世界市場に挑む姿」 を現地で取材いただくことで、社会課題解決型のドキュメンタリーとして広く発信いただけることを期待しています。

コメント(有限会社坂田織物 代表 坂田和生)

「シャトル織機は効率化の波に取り残されつつありますが、その魅力は世界で評価されています。
久留米と豊橋の協業は、産地間コラボによる持続可能なものづくりのモデルケースです。今回の挑戦を通じて、日本の繊維産業の新しい可能性を示したいと考えています。」

会社概要

会社名:有限会社 坂田織物

所在地:福岡県八女郡広川町長延602

代表者:坂田 和生

事業内容:久留米絣の製造・販売、国内外ブランドとの協業、観光・文化事業

設立:1948年

本件に関する問い合わせ先

有限会社 坂田織物
代表:坂田 和生
Mail:kausriya@axel.ocn.ne.jp
Tel:0943-32-1402

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