革新と芸術性を体現してきたジェイコブ&コーの歩みを、シリーズ形式でご紹介する「JACOB&CO. STORIES」。第11回では、ブランドを象徴する「アストロノミア」の誕生とその進化の軌跡に迫ります。
ジェイコブ・アンド・コー・ジャパン株式会社のプレスリリース

――時間を“見る”のではなく、時間が“魅せる”。
ジェイコブ&コーのアストロノミアは、サファイアのドームの下で、公転と自転が折り重なる立体機構を用い、時間表示そのものをアートへと押し上げました。視線を移すたび、地球は静かに自転し、ダイヤモンドの“月”が光を砕き、多軸トゥールビヨンが重力に抗う。次の瞬間、舞台のどこで“時”が動くのか。視線は自然とドームの奥深くへ吸い寄せられていきます。
誕生の背景――「平面のダイヤル」から「空間の物語」へ

はじまりは、発想の転換でした。従来の機械式時計は、平面のダイヤル上に情報を整然と載せていく思想が中心にあります。アストロノミアが目指したのはそんな常識を打ち破ること、そして宇宙を時計に凝縮するというロマンの追求でした。平面的な造りであることが常識の時計内部の構造において、地球や月、惑星を模した構造物がまるで宇宙の星々のように時計の内部を公転、自転する。そんな不可能とも思える夢物語です。それはもはや“時間を読む”行為ではなく、“時間が魅せる”舞台。
もちろん、ロマンだけで時計は動きません。課題は山積みでした。まずは動力配分。複数の回転体を同時に回しながら、時分表示の可読性を損なわない差動機構(ディファレンシャル機構)を組み込む必要がある。加えて、サファイアドームと、ケースサイドがサファイアクリスタルであることで生まれる開放的な空間の中で、重量配分と耐衝撃性をどう両立させるか。さらに、回転体がつくるトルクのゆらぎを抑え、パワーリザーブを確保するための輪列の最適化も欠かせません。
それでもジェイコブ&コーは一つのゴールを掲げます。
――“時間が魅せる”回転機構。
アストロノミア トゥールビヨン――時間が“魅せる”第一幕


2015年に登場した初代アストロノミアである「アストロノミア トゥールビヨン」は、直径50mmの堂々たるケースにサファイアドームを戴き、サファイア製ケースサイドがもたらす極限の透視性のもと、四つのサテライトが優雅な軌道を描きます。サテライトを備えた回転プラットフォームは20分で一周。時分表示ダイヤルは差動機構により常に12時上を維持するため、周回軌道のどこにいるときであっても“現在時”に迷うことはありません。
見どころは、3軸トゥールビヨンが生む「呼吸」のテンポです。60秒の第一軸に、5分の第二軸、さらに20分で一周する回転プラットフォームの公転が“第三軸”として重なり、空間全体に律動が走る。向かい合う位置には、マグネシウム製の地球儀とジェイコブカット(ジェイコブ&コーオリジナルの288面体カット)ダイヤモンドのムーン。どちらも60秒で自転し、美しく光の粒を散らしながら、『時間を観測』する行為へと昇華させていきます。
初代の意義は明快です。
――時間を“見る”のではなく、時間が“魅せる”
このブランドとしての明確な意思は、のちの派生コレクションを導く重要な羅針盤になりました。
アストロノミア スカイ――天球儀を覗き込む体験


2016年に登場した「アストロノミア スカイ」は、その名の通りアストロノミアコレクションをより高い写実性を持った空の世界へと押し上げたアートピースです。発想はシンプルで大胆。回転プラットフォームの下層に“星図”を敷く。ブルーチタンのベースダイヤル(台座)に黄道十二宮をゴールドのインレイ(埋め込み装飾)で描き、オーバルインジケーターにより、“いま見えている空の範囲”を囲い示します。ベースプレート(台座)は約365.25日で一周し、恒星年の遷移を腕上で追いかけます。
上層では、「アストロノミア トゥールビヨン」同様に回転プラットフォームが20分で公転し、3軸フライングトゥールビヨンを備え、時分表示ダイヤルは差動機構で常に正位置を保持。中央に配された地球儀は半覆いのカシェをまとい24時間で自転してデイ・ナイトを可視化します。秒針は宇宙船を思わせる円錐型のリングで60秒ごとに姿を変え、対をなすダイヤモンドの月が光で呼応する。
つまりスカイは、“天球儀を覗き込む体験”を、機械的に具体化した存在と言えます。
――人間の時間(時刻)と空の時間(星図の推移)が、同じ舞台で静かに並走する感覚が、アストロノミアに奥行きを与えています。
そして、アストロノミアの物語は「宇宙を観測する」という行為を腕時計の上で完結させた一本へと移ります。――“時間が魅せる”のは、天の物語そのもの。
アストロノミア ソーラー――機械仕掛けの太陽系


2017年に登場した「アストロノミア ソーラー」は、アストロノミアの語彙を装着性の高いケースサイズへ圧縮した到達点。中央にジェイコブカットのジェムを“太陽”として据え、回転プラットフォームは進化を遂げ10分で一周。回転プラットフォーム上には時分表示ダイヤルと2軸フライングトゥールビヨン、1分で自転する地球が配されています。さらにベースダイヤルには太陽系を模した7種のジェム(水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星)がセッティングされ、回転プラットフォームと逆回転することでパララックス(視差)を生み出し“機械仕掛けの太陽系”が手首の上に誕生します。
「アストロノミア ソーラー」には二つの顔があります。
ひとつは「アストロノミア ソーラー ゾディアック」。時分表示ダイヤルには12星座が描かれており、アベンチュリン製のベースダイヤルは夜空の様相を呈しています。ソリッドのラグも相まって時計の中に宇宙を凝縮したかのような圧倒的な存在感を放ちます。
もうひとつは「アストロノミア ソーラー コンステレーション」。コンステレーションの夜空=ベースダイヤル(チタン製)には星図が描かれています。時分表示ダイヤルはスケルトナイズされ、ラグはサファイア製ケースサイドと連なり肉抜きされているため、ゾディアックとは真逆の広がりを感じる仕上がりとなっています。
スカイで育てた“空の語彙”をコンパクトな舞台へ再配置し太陽系を再現。太陽と地球×惑星と夜空のレイヤーを公転×その逆回転で重ねることで、視線の移動ごとに宇宙の秩序が更新される。その凝縮の巧さこそ、ソーラーの価値です。
見惚れる回転機構のさらなる深化
アストロノミアの黎明期の三年間(2015–2017)は、回転機構の劇場性、スカイがもたらした観測の体験、そしてソーラーが凝縮した物語と装着性──
それぞれの進化が、“時間が魅せる”という思想を段階的に形にした時代でした。
――時間を「見る」のではなく、時間が「魅せる」。
その思想を体現した存在こそ、アストロノミアです。
次回の「【JACOB&CO. STORIES】Vol.12:アストロノミアの深化──10分から1分、三次元から四次元へ。常識を超えた革新の歴史」では、アストロノミアのさらなる深化に迫ります。
*Next Chapter*
【JACOB&CO. STORIES】Vol.12:アストロノミアの深化──10分から1分、三次元から四次元へ。常識を超えた革新の歴史
【JACOB&CO. STORIES】Vol.13:広がる宇宙空間──アーティスト、メタバース、ビットコイン…アストロノミアが出会う新たな表現世界
*Archive*
【JACOB&CO. STORIES】Vol.1:ブランドの原点──ジェイコブ・アラボ、ブランド誕生の物語
【JACOB&CO. STORIES】Vol.2:“ジュエラーの反逆”──スイスに拒まれた男が作った革命のタイムピース
【JACOB&CO. STORIES】Vol.3:新章開幕──ファイブタイムゾーンから“機械芸術”へ、Jacob & Co.革命の瞬間
【JACOB&CO. STORIES】Vol.4:ブランドの現在地──時計を超えて芸術へ、Jacob & Co.が描く革新の形
【JACOB&CO. STORIES】Vol.5:“唯一無二”の共鳴──時計の概念を超えて広がるJacob & Co.の世界観
【JACOB&CO. STORIES】Vol.6:世界のセレブが夢中になるジェイコブ&コーの真価──“本物”の証は腕元に宿る
【JACOB&CO. STORIES】Vol.7:JACOB&CO.のラグジュアリー革命──時計を超えた究極のライフスタイルとは
【JACOB&CO. STORIES】Vol.8:Epic Xの革新譚──ラグジュアリーの再定義、“X”が導く革新
【JACOB&CO. STORIES】Vol.9:“X”が象る魂と構造──スケルトン、ブリッジ、CR7が紡ぐエピックXの真髄
【JACOB&CO. STORIES】Vol.10:“X”が切り拓く美と革新──拡張し続けるエピックXの表現領域が導く、ラグジュアリーの新たな地平
【The Latest|新たな一歩】
ジェイコブ&コーは、絶えず進化を続けています。
ここでは、ジェイコブ&コーの最新の動きをお届けします。
エピックX スポーツにブレスレット仕様が登場


2025年のウォッチズ&ワンダーズで鮮烈なデビューを果たし、大きな注目を集めたエピックX スポーツに、新たにブレスレット仕様が登場します。従来のハニカムラバーストラップ仕様(2,464,000円 税込)に対し、ブレスレット仕様は 2,816,000円 税込 で展開。ラグジュアリースポーツウォッチの中でも珍しい、ブラックPVDとブルーPVDのステンレス製ブレスレットです。
◆JACOB&CO. STORIES
2022年4月、JACOB&CO. JAPAN(代表取締役 福田魁)が設立されました。
今年、ジャパン設立から3年目という節目を迎えるにあたり、改めてブランドの軌跡を深く掘り下げ、その本質に迫る連載企画「JACOB&CO. STORIES」を始動します。
本企画では、ブランドの創業から現在に至るまでの歴史、世界的なパートナーシップ、そして珠玉の現行コレクションを、全24回にわたってご紹介予定。
なお、本連載は毎月第2・第4月曜日に公開を予定しております。
ジェイコブ&コーの軌跡を、定期的にお届けしてまいります。
*連載構成*
Vol.1~Vol.4:『ブランドヒストリー』 創業から成長まで、ジェイコブ&コーの原点に迫る。
Vol.5~Vol.7:『パートナーシップ』 各界とのグローバルなパートナーシップを紹介。
Vol.8~Vol.24:『現行コレクション』 革新と美学が息づく現行ラインナップの魅力を紐解く。
【ジェイコブ&コーについて】
1986年に設立。当初は高級ジュエリーを取り扱い、宝飾業界で高い地位を確立し、2002年に時計業界へ本格的に参入しました。世界中のセレブリティを中心に一世を風靡したファイブタイムゾーンウォッチから始まり、これまで不可能と言われてきた複雑機構「アストロノミア」、「ツインターボ」、「ブガッティ シロン」などの開発に成功し、時計業界に技術革新を起こし続けています。現在、ジェイコブは超高級車メーカー「ブガッティ」やサッカー界のスター選手「クリスティアーノ・ロナウド」などとパートナーシップ契約を結び、「不可能を可能に」というコンセプトのもと革新的な作品を生み出し続けています。スイス最高峰の時計製造技術と宝飾業界で培った高い芸術性とノウハウを兼ね備え、時計業界の最先端を行くブランドとして、世界中で多くのファンを魅了し続けています。
▼ジェイコブ&コー銀座ブティック
〒104-0061
東京都中央区銀座6-7-9丸喜ビル1階
営業時間:平日12:00〜20:00 土日祝11:00~20:00
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Tel:03-6281-4777