ブレゲ「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」

250周年記念モデル第4弾として、創業者ブレゲがトゥールビヨンの特許を取得した1801年6月26日を祝し、6月26日に「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」を世界限定50本で発表しました。

スウォッチグループジャパン株式会社 ブレゲ事業本部のプレスリリース

ムーブメントの中心を占めるトゥールビヨンとその歴史

ブレゲ・マニュファクチュールは、トゥールビヨンに関する特異な唯一無二の専門技術と知識を有しています。アブラアン-ルイ・ブレゲが共和暦9年メシドール7日、すなわち1801年6月26日にトゥールビヨンの特許を取得して以来、その遺産の相続者に他なりません。

メゾンは、数知れないバリエーションを絶えず探求してきましたが、「フライング・トゥールビヨン」を発表するのは今回が初めてです。このバリエーションは、ブレゲが使い始めてからやがて20年近くなる「ミステリー」と呼ばれる時計機構のコンセプトにも結び付いています。

この新作は、複雑機構への敬意を示すだけでなく、“トゥールビヨン”という名称そのものの語源を称えるものでもあります。「シデラル」という用語の選用は偶然ではありません。それは星々の世界、天体運行の正確性、太陽ではなく恒星の定位置に基づく時間測定と結びつきます。これは宇宙とその法則に結びついた、より厳密な時間の概念を示唆しています。

トゥールビヨンがブレゲの天文的発展を想起させるモデルに搭載されたのは、歴史的背景にも合致しています。実際、現代での“トゥールビヨン”の意味は、その語源に非常に近い「高速で円運動するもの」です。しかし、17~18世紀には異なる意味合いを持っていました。

その当時、数学者ブレーズ・パスカルは“トゥールビヨン”の意味を「回転運動を伴う物質的システム」へと拡張しました(1647年、デカルト『哲学原理』)。それ以来、トゥールビヨンの概念は惑星系にまで適用され、天文学と直結することとなりました。

ブレゲは彼の時代の学術的伝統に身を置いていましたが、その発明は時代をはるかに先んじていました。224年を経た今でも、トゥールビヨンは無数の進化を遂げていますが、その原理は決して本質的に超えられていません。

 

トゥールビヨンのバリエーション

アブラアン-ルイ・ブレゲ(1747-1823年)は、トゥールビヨンを考案しましたが、その決定的な技術の周辺をしっかり固めることにも気を配っていました。時計に科学的進歩をもたらさそうと絶えず望んでいたこの飽くなき発明者は、すでに完成され不動のものとなった手段ではなく、新たな原理を作り出すことを常に意識していました。ブレゲ自身、構造や振動数、回転速度など多岐に渡り、トゥールビヨンの数々の形態を実験しました。

1800年代初頭から「Breguet et fils(ブレゲと息子)」というサインを用いるようになったメゾン・ブレゲも30年以上に渡り、それに取り組みました。1796年から1829年に製作されたトゥールビヨンは40点にのぼります。

ブレゲ・マニュファクチュールは今、初のフライング・トゥールビヨンの開発に際して、偉大な時計師がたどった足跡を振り返りました。彼の考えを受け継ぐメゾンは、フライングとミステリーという2つの異なる要素を実現するために、トゥールビヨンの根本へと立ち返りました。

フライング・トゥールビヨンは、伝統的なトゥールビヨンのバリエーションのひとつですが、テンプを格納したケージ(キャリッジ)を回転させることによってテンプに加わる重力の影響を補正するという本来の役割に変わりはません。ただし登場時期はかなり後になり、最初に実現されたのは20世紀の初頭です。

フライング・トゥールビヨンは、伝統的なトゥールビヨンと違って、上部ブリッジがなく、下部ブリッジのみでキャリッジを支えます。したがって下側で支えられたトゥールビヨンが宙に浮いているような印象を与え、これがフライングという名称の由来になりました。

とはいえ構造は一段と複雑です。トゥールビヨンのケージの軸が上下の2点ではなく、その底部のみで支えられているからです。そのため、頑強さの確保やより繊細な調整を要し、さらには最良の平衡が求められます。頑強さと高精度はアブラアン-ルイ・ブレゲがすでに1801年に追求していた目標でした。ブレゲを名乗るマニュファクチュールが2025年に追求するのは、今もこれと同じです。

 

ミステリーというコンセプト

メゾン・ブレゲは、下部ブリッジで支えるフライング・トゥールビヨンの仕組みをさらに強調するためにミステリーという構造を作り上げました。

ミステリー・コンプリケーションとは、あるパーツを他のムーブメント部分と目に見える接続なしに動かす機構のことです。通常は時計や置時計の針に使われますが、回転するすべての部品に応でき、「クラシック トールビヨン シデラル 7255 」に見られるように、トゥールビヨンにも適用可能です。

ブレゲの時計師によって開発されたミステリー・コンプリケーションは、見る者を驚かせます。通常なら繊細な装飾が施されるキャリッジのブリッジや基部で軸を支えるパーツが、このモデルでは無反射加工のサファイアで作られています。

したがって、それらは見えません。輪列とキャリッジをつなぐ接点も見えません。トゥールビヨンの開口部より外側に置かれた接点が文字盤によって隠されているからです。

 

“ミステリー”かつ“フライング”

この「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」には、“ミステリー”と“フライング“トゥールビヨンの両方が組み込まれています。これは、ムーブメント上部に伸びる見えない駆動機構を備えたレギュレーターとの組み合わせによって実現されています。この構造により、メカニズムがまるで宙に浮いているかのような効果が生まれ、トゥールビヨンの視認性もいっそう高められているのです。

 

天文学を讃えて

アブラアン-ルイ・ブレゲは1747年1月10日にスイスのヌーシャテルで生まれました。1775にパリで自身の事業を始めた彼は、移住したパリで、シテ島にあるケ・ド・ロルロージュに工房を構えます。世界に輝きを放つフランスの首都で若きブレゲは、コレージュ・マザランに通い、優れた数学教授のマリー神父のもとで学びました。二人は数十年に渡って親交を続け、それが未来の時計師をやがて天文学の研究へと導く原点になりました。

コレージュ・マザランで修めた課程によって、ブレゲは時代の先を行くエンジニアになり、科学的教養をしっかり身に着けました。後に彼は科学アカデミー(コレージュ・マザランの地所に設立)の会員になっただけでなく、天文学の多岐にわたる分野の全般に関わる経度委員会の委員も務めました。

彼は人生を通じて天文学者のラランド、ビオ、ニコレ、カッシーニ、フランソワ・アラゴと親しく交際していました。ブレゲは、若い天文学者のアラゴとは科学アカデミーで知り合い、天体望遠鏡の接眼レンズに装着して時間計測を可能とする天文計測機を提供しました。

 

クラシック トゥールビヨン シデラル 7255

「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」は、こうした背景と結び付いており、新しい文字盤の装飾にブレゲ・マニュファクチュールでは初めてゴールドのベースに重ねたアベンチュリン・エナメルが用いられています。天文学や星空の観測に敬意を表したその深いブルーに散りばめられた銅の細片は、天空に輝く星を思わせます。

アベンチュリン・エナメルの技法は17世紀初頭まで遡ります。銅の細片が加わるガラスがまさに星空の印象をもたらすこの技法は、当時から絶えず改良されてきました。ブレゲはこの時計のためにグラン・フー エナメルのような作業を選びました。つまり、ガラスを粉末にするのです。最終的な組成には繊細にサイズを選ぶ必要があります。完璧な結果を生むためには、アベンチュリンの粉末が伝統的なエナメルの粉末よりもわずかに大きな粒子を持っていなくてはなりません。次にそれらを一緒にして摂氏800度以上の炉に入れ、この文字盤を最低でも5回連続して焼きます。1回ごとの焼成は極めて繊細です。時間が長すぎても、温度が高すぎても、満足のゆくような結果がまったく得られません。

「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」の文字盤は、2つの素晴らしい世界が融合されています。つまりエナメル・ガラスの深い単色のブルーと星を象った銅の細片のきらきらとした輝きです。

アベンチュリン・エナメルの文字盤はひとつひとつ手作りされました。したがって、「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」の50本は、それぞれがユニークピースと呼ぶにふさわしいのです。

 

アブラアン-ルイ・ブレゲが発明し、1801年に特許を取得したトゥールビヨンは、

今なお時計製造において最も複雑なコンプリケーションのひとつです。その卓越した機構は、

ブレゲが2世紀以上にわたって忠実に守り続けてきた技術を体現しています

CEOグレゴリー・キスリング

 

 

トゥールビヨンの 技術的説明

ブレゲ・マニュファクチュールは、この「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」に搭載されるトゥールビヨンに特別な注意を払いました。伝統あるトゥールビヨンを現代のデザインや技術に合わせて美しく進化させました。

機構の奥行き感を強調するためにトゥールビヨンを持ち上げ、宙に浮いた感じを出すことです。それは、天体が広大な宇宙空間に漂っているイメージにつながります。

トゥールビヨンは地板からは2.2mm高く、アベンチュリン・エナメルの文字盤からは0.9mm高くなるように持ち上げられています。まさに著しい上昇です。このトゥールビヨンを加えた全体の厚さ7mmがムーブメントの厚さになります。

言い換えれば、このムーブメントの全高を決定しているのはトゥールビヨンであり、ケースの厚さ(10.2mm)はそれによって左右されています。「クラシック トゥールビヨン シデラル  7255」においては、トゥールビヨンこそが主役であり、ムーブメント全体はトゥールビヨンを中心に設計されており、そのサイズが時計全体のプロポーションを決定づけています。

この壮麗な効果を実現するためには、文字盤の設計と製造において新たな手法を生み出す必要がありました。文字盤は、立体的な縁を持つゴールド製の基盤や、ゴールド製のトゥールビヨンを囲むリングなど、複数の要素で構成されています。

このようなデザインには、実は隠れた技術的機能があります。それは、これらの要素が金属製の立ち上がり壁となり、文字盤の縁を閉じる役割を果たしているという点です。この構造によって、アベンチュリン・エナメルを施す際に、エナメルを丁寧に積み重ねていくことが可能になるのです。

アワーサークルやアプライドによる「Breguet」と「Tourbillon」のロゴ、そして時刻を示すアプライドのブレゲ数字が、いずれもブレゲゴールド特有の温かみのある輝きを放ち、文字盤は視覚的な美しさを楽しませてくれるだけでなく、「ミステリー・コンプリケーション」においても重要な役割を果たしています。

その背後には、トゥールビヨン・ケージを駆動する機構が隠されており、外からはケージがまるで宙に浮いているかのように見え、ムーブメントの他の部分とは視覚的に接続されていないという印象を与えるのです。

 

トゥールビヨン シデラルの装飾

「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」はブレゲゴールドで作られています。ブレゲ独自のこの18Kゴールド合金は、創業250周年を記念する最初のモデルで披露されました。暖かみのあるローズ色は、ブレゲを含む18世紀の時計師たちが用いたゴールドから想を得ています。75%のゴールドにシルバー、コッパー、パラジウムが配合されたブレゲゴールドは、美しい輝きだけでなく、変色しにくく、時間が経っても性質が安定していることも特徴です。

ケースバック側から見えるムーブメントの装飾は、今年初めて発表された新しいギヨシェ彫りが用いられています。「ケ・ド・ロルロージュ」と名付けられたこのモチーフは、シテ島を縁取る曲線やサンルイ島のすらりとした美しい輪郭から着想したものです。このあらたに誕生したケ・ド・ロルロージュ模様のギヨシェ彫りが、従来の円形パターンだけでなく、ムーブメント全体の地板にも線状パターンとして施されました。この美しい装飾は、ケースバックのサファイアガラス越しに鑑賞することができます。

また、ケースバンドのフルート装飾、ロウ付けによる直線的なラグ、「くり抜かれたリンゴ」とも呼ばれるブレゲ針などの伝統的なデザインコードもすべて揃い、文字盤にはメゾンのシークレット・サインが施されています。さらにケースバックには1/50から50/50の限定個別番号が加わります。

 

CEOグレゴリー・キスリングのコメント

 

ミステリーとフライング機構を併せ持つトゥールビヨンを作ろうと考えたのはなぜですか?

ブレゲはコレクションにたくさんのトゥールビヨンがすでにあり、また、ミステリー機構のトゥールビヨンを搭載した精巧なモデルもすでに発表しています。これに対して新しいのは、トゥールビヨンを前面に押し出したこのフライングのキャリッジです。

それがなぜ特別なのでしょうか?

それは、ブレゲの歴史の中で初めてフライング・トゥールビヨンを発表するからです。250周年を祝うにふさわしい方法です!そして私たちが採用したトゥールビヨン・モデルも、決して普通のものではありません。1990年に発表されたブレゲ初のトゥールビヨン腕時計(Ref.3350)に使用されたムーブメントが、その原型です。「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」は、この象徴的なタイムピースと偉大な発明に敬意を表するものです。さらに言えば、この新作はトゥールビヨンへのオマージュであり、時刻表示さえも副次的に感じられるほどです。

アベンチュリンについて説明していただけますか?

この素材を見ると、一般的に人は「素晴らしい!」といった感嘆の声をあげます。名称はイタリア語の「a ventura」に由来し、文字通り「偶然」を意味します。誕生したのが偶然だったからです。17世紀、ムラーノ島のガラス職人が溶けたガラスの中にうっかり銅の切れ端を落としました。ガラスが冷えると、金属片がガラスの中で結晶のように固まり、それまで見たこともない美しい煌き放つガラスが誕生しました。ブルーの色は、コバルト結晶を用いて得られます。

なぜこのモデルにアベンチュリンを取り入れたのですか?

私たちのアニバーサリーモデルは、それぞれに物語を持ちます。この新作では、トゥールビヨンの物語を語りたかったのです。新作の名称には「シデラル(Sidéral:天体の)」という語が含まれており、それは星々に関連しています。初代ブレゲの時代、「トゥールビヨン」という言葉は、特定の軸を中心に回転する天体を意味していました。そのつながりは明白です。澄んだ夜空を見上げれば、無数の星が輝いています。だからこそ、アベンチュリンの使用は非常に意味があります。内部の銅片が、星空にきらめく星々を思わせます。

アベンチュリン・エナメルは恒久的な素材としてブレゲのコレクションに加わるのでしょうか?

はい。他にも興味深い素材はたくさんありますが、アベンチュリンにその可能性は十分あります。ただ、アベンチュリンは、複雑機構が特に天体に関連するこのモデルのために私たちが探していた、心を奪うような魅力を持っているのです。オートオルロジュリーの多くのブランドがコレクションにアベンチュリンを用いているのも偶然ではありません。

ブレゲのコレクションに新素材を取り入れることの重要性は何でしょうか?

アブラアン-ルイ・ブレゲが行ったように、私たちも新しい素材をいろいろ試し、検証し、取り入れたいと考えています。時計づくりとは、果てしない試みの場であり、革新をやめることはありません。加えて、私たちはメゾンの中に素材のスペシャリストを抱えており、彼らは常に一歩先を目指して試みています。それは、さまざまな部門が一致団結して取り組むプロジェクトなのです。

 

副社長・パトリモニー部門責任者エマニュエル・ブレゲのコメント

 

アブラアン-ルイ・ブレゲの時代にトゥールビヨンはいくつ作られたのでしょうか?

アーカイブの中で特に当時の製造台帳を徹底的に調べた結果、総数は35点になりますが、これに加えて見落としてはならない5つの時計があります。有名な時計愛好家ソマリヴァのシンパティック・クロック(トゥールビヨンを搭載する置時計と回転台に置かれた懐中時計から成る)、マリン・クロノメーター、大型のデモンストレーション用モデル、トラベル・クロックです。それぞれ異なるこれらの作品は、自身の発明に対するブレゲの大いなる野心の証明に他なりません。したがって総数は40点になりますが、ここには完成に至らなかった他の9点は含まれず、それらは台帳に「帳消し」「スクラップ」「紛失」などと記載され、損失率もかなり大きかったことがわかります。

アブラアン-ルイ・ブレゲは、特許取得の前にトゥールビヨンをすでに販売していましたか?

当然ながらイエスです。発明者ブレゲは、自身の直観や計算の正しさを一刻も早く知ってもらいたいと考え、1801年より以前に3点トゥールビヨンを販売しています。

アブラアン-ルイ・ブレゲの時代、トゥールビヨンを搭載した精密時計を製作するのに平均でどれくらいの時間がかかりましたか?

6年以上です。「通常」のブレゲの時計に要する時間の2倍にあたります。長くかかったのは、実際の製作工程が繊細なこと、巨匠を取り巻く人々の中でさえも、その資格がある職人を探すのは困難なことでした。

ブレゲのかつてのトゥールビヨンを販売した相手についてお話いただけることは?

特許取得から10年後の1811年にメゾンが販売したトゥールビヨンは10点に過ぎません。購入者の中にイギリス王ジョージ3世や後の王ジョージ4世、スペイン国王フェルディナンド7世が名を連ねるのは驚かざるをえません。そしてロシアの貴族や、ヨーロッパ各国の著名人も含まれます。ここまでは、40点のうちの初期の4分の1に相当しますが、これらが「航海」での使用を目的にしていたのは間違いありません。つまり、船主や船員が購入し、航海での経度測定に利用したということです。およそ50年に渡り世界の海を航行したトーマス・ブリスベーンは、自分の時計と航海用の機器を使ってオーストラリアに帰りつきました。このような使用法はブレゲを鼓舞し、海軍時計師の任務に熱心に取り組み、あらゆる状況でも常に高精度を発揮する時計の供給に力を注ぐようになりました。

メゾンが製作した当時のすべてのトゥールビヨンはその後どうなりましたか?

10数点が博物館に所蔵されています。また3点がブレゲ・ミュージアムのコレクションに含まれ、4点が大英博物館とイギリスの他の組織に保存されています。他にはイタリアのミラノ、イスラエルのエルサレム、アメリカのニューヨークの博物館で目にすることができ、あと15点ほどが個人のもとにあります。

 


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