FULL KAITENのプレスリリース
売上・粗利・キャッシュフローを最大化させる在庫分析クラウドシステム(SaaS)『FULL KAITEN』を開発し小売企業等に提供するフルカイテン株式会社は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が日本で始まってから2年目に入った2021年4~6月期における大手上場アパレル企業7社の決算を調べ、各社が少ない在庫でいかに多くの粗利益を上げる力を回復させているかを考察するレポートを作成しました。
下記にレポート全文を公開します。PDFファイル版は下記リンクからダウンロードできます。https://full-kaiten.com/news/report/3955
要点は次の通りです。
- 全16社の売上高が前年を上回り、3社が営業増益に。前年に営業赤字だった13社のうち9社が黒字転換し、他の4社も赤字幅が縮小した
- 少ない在庫で多くの粗利益を稼ぐ力の指標であるGMROIは、全社が前年から2桁の改善。2倍以上になった会社も3社あった
- 期中仕入れ(発注)額は、百貨店系アパレル3社が前年を2桁下回り、12社は前年を超えた。一方で5月末の在庫高は全社が前年を下回った
- 粗利益を増やすには仕入れ原価の低減よりも値引き販売を抑制する方が効果的。限られた量の在庫で売上・粗利益・キャッシュフローを最大化する取り組みが必要
なお、本稿は、2月期・5月期・8月期決算16社の21年3~5月における決算をまとめた別のレポート「コロナ禍2年目の2021年3~5月期、在庫消化が進み仕入れ抑制解除も第5波のリスク大」(本年7月21日公表、https://full-kaiten.com/news/report/3784)の続編となります。
- 全7社が増収。6社で営業損益が改善
本稿の調査対象は3月期・9月期決算の主要アパレル企業7社の2021年4~6月における決算。決算短信を基に売上高、営業利益、当期純利益をまとめたのが表1だ。
売上高は全7社が前年同期を上回った。コナカは前年の2倍となったほか、ワールドと青山商事、AOKIホールディングス、ユナイテッドアローズ、ワークマンの5社は前年比で13.8%~30.8%増となった。2020年は4月から5月にかけて緊急事態宣言が出され、実店舗が閉店して売上が低迷しており、21年はその反動で大方の予想どおり大幅増収となった形だ。
営業利益をみると、前年に黒字だったワークマンは16.0%の2桁増益を果たした。前年に赤字だった6社のうちワールドが黒字転換し、コナカを除く4社は赤字幅が縮小している。各社とも採算性が向上したことが窺える。
- 手放しで喜べないGMROIの大幅改善
次に、前年と比較した期中仕入れ額と6月末の在庫高、GMROIの増減率を計算したのが表2だ。
4~6月の仕入れ額はワールド、ユナイテッドアローズ、ワークマン、はるやまホールディングスの4社が前年同期から3.2%~16.7%減らした。
逆に青山商事とAOKIホールディングス、コナカの3社は前年から増やしており、特にコナカは64.5%増と突出している。コナカは2020年7月にサマンサタバサジャパンリミテッドを連結子会社化しており、売上高が増えた分、仕入れ額も増えているとみられる。
次に6月末時点の在庫高を見てみる。前述のコナカを除く6社が前年同期と比較して5.4%~34.2%減少した。2021年3月期まで11期連続で増収中のワークマンでさえも6月末の在庫高を前年比17.0%減らしているが、同社は21年3月期には在庫効率が悪化していた。今4~6月期はPBの品目数の拡大に歯止めをかけた成果が出たといえそうだ。
続いてGMROIについてまとめる。本稿がGMROIを重要な指標とみている理由は次の通りだ。
多くのアパレル企業は国内事業が売上高の大半を占めているが、その国内は縮小市場であり、売上規模ばかり追求すると過度の価格競争に陥る。そうした市場では、売る力を超える量の在庫を持つことは大きな経営リスクとなるため、限られた量の在庫で売上・粗利益・キャッシュフローを最大化させる経営が求められるのだ。
※GMROI:小売業などの在庫ビジネスにおいて、保有する在庫を用いて効率的に粗利益(売上総利益)を上げる力を表す指標。(粗利益額) ÷ (期中平均在庫高)で求められる
前述のとおり、各社とも前年より在庫高が減ったうえ、次章で詳しく触れるように粗利率も改善しているため、GMROIは全7社が改善している。中でもAOKIホールディングスとコナカは2倍超となり、ワールド、青山商事、ユナイテッドアローズ、ワークマンの4社もおよそ3割~6割上昇した。
GMROIが改善したことは良いことである半面、ワールドとワークマンを除く5社は21年4~6月期も営業赤字のままだ。これは、次のような理由で大きな問題を孕む。
・GMROIは改善したとはいえ営業赤字のままということは、粗利益で固定費を賄えていない状態にある
・各社とも21年6月末の在庫高は前年より減らしている
・固定費の削減には限界がある
・つまり、少ない在庫で多くの粗利益を生まなければ営業黒字への転換は難しい
・投資に必要なキャッシュフローを回すためにGMROIのさらなる改善が求められるが、現状ではそれも困難
こうした課題をクリアするための在庫運用は、非常に難しい舵取りを迫られる。
- まとめ:粗利を増やすには原価低減よりも値下げ抑制
最後に、表3は各社の粗利率とその対前年増減を一覧にしたものだ。
全7社が粗利率を改善させている。共通するのは、コロナ禍の影響が大きかった前年と比べてセールや値引き販売が抑制されたことだ。各社の決算短信には「本年はプロパー販売主体で採算を重視した戦い方を推進」(ワールド)、「春夏商品の在庫調達を抑え値引きを抑制し、定価販売比率の前年同期比での改善を図った」(ユナイテッドアローズ)、「男女のオーダーウェアに対する底堅い需要を着実に捉え、客単価も確保」(コナカ)と、一定の手応えが感じられる開示内容が並ぶ。
アパレル産業では仕入れ原価を下げるだけ下げて前年超え・前年並みの売上高をつくるために十分な量を発注し、計画通りに消化できなければ値下げして残在庫の発生を防ぐという考え方が主流となってきた。
しかし、製造原価の低減は商品の同質化という弊害が出てくるほどまでに努力がなされており、仕入れ原価率を数ポイント下げられたとしても利益感度は低い。さらに、予算達成に十分な量を仕入れた結果として発生した残在庫の評価減(償却損)とキャリーした場合の翌期への負の影響は計り知れない。
逆に値下げが粗利益に与えるインパクトは非常に大きく、仕入れ原価を数ポイント下げることよりも、何十%もの値引きを抑える方が利益感度が高いことは自明の理である。
そもそも、在庫を多く持つことで売上増加を目指す従来のビジネスモデルにとどまっていては、今般のように仕入れ抑制と増加、在庫増加と減少を四半期ごとに繰り返さざるを得ず、値下げのコントロールによる粗利益増加は覚束ない。
在庫の運用効率を上げることで、手もと在庫を使って売上・粗利益・キャッシュフローを最大化させるビジネスモデルへの変革が求められているといえる。
※本レポートのPDF版は下記リンクからダウンロードできます(無料)。
https://full-kaiten.com/news/report/3955
※本調査は、対象となった上場企業16社の経営成績や財政状態の優劣を評価するものではありません。
【お問い合わせ先】
フルカイテン株式会社
広報チーム 南
電話: 06-6131-9388
Eメール: info@full-kaiten.com
【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
事業内容: 売上・粗利・キャッシュフローを最大化する在庫分析クラウドサービスの開発
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月7日
代表者: 代表取締役 瀬川直寛