11月17日 世界早産児デーに合わせ開催中 「#ちいさな産声サポートプロジェクト展」レポート

ピジョン株式会社のプレスリリース

 ピジョン株式会社(本社:東京、社長:北澤 憲政)は、11月17日の世界早産児デーに合わせ、一般向けイベント「#ちいさな産声サポートプロジェクト展 ~知ってほしい、小さく早く生まれた赤ちゃん家族の物語~」を2023年11月16日(木)~17日(金)に池袋・サンシャインシティ 噴水広場にて開催しています。またイベントに合わせ、早産でお子さんが生まれたご家族(以下早産児ご家族)と早産経験がないご家族(以下一般のご家族)を対象に、早産児の出産・育児に関するアンケートを日本NICU家族会機構(JOIN)と共同で実施いたしました※1。
 本レポートでは、アンケート結果から読み解いた早産児とそのご家族の出産・育児の実態に加え、11月16日(木)にイベント内で実施したオープニングセレモニーの様子をご紹介いたします。

 早産児とは、在胎37週未満で出生した赤ちゃんのことを言い※2、日本では、約20人に1人※3が早産児として生まれます。また、早産児は低体重で生まれることも多くありますが、2022年には29年ぶりに低出生体重児のための「発育曲線」が厚生労働省によって発表された他、近年では低出生体重で生まれた赤ちゃんの成長を記録するリトルベビーハンドブックが全国約8割の都道府県で運用・配布されるなど※4、低出生体重児をサポートする動きが徐々に広まっています。その一方で、早産児や低出生体重児のご家族が抱える具体的な課題については、当事者ご家族以外にはまだあまり知られていないのが現状です。

 本イベントに際し行ったアンケートでは、早産児ご家族の気持ちや、周囲の人との付き合いや行政の制度におけるお悩み、また一般のご家族へは、早産児とそのご家族への認知などについて実態を調査しました。

※1 早産でお子さんが生まれたご家族を対象とした調査はピジョンと日本NICU家族会機構(JOIN)の共同で、早産経験がないご家族を対象とした調査はピジョンで実施。

※2 正期産は妊娠 37 週 0 日~41 週 6 日までの期間での出産。  

※3 2022 年人口動態調査(厚生労働省)

※4“各自治体のLBハンドブック”(特定非営利活動法人 HANDS)(https://www.hands.or.jp/activity/lbh2023/

  • アンケートサマリー

●子どもが早産で生まれたことで不安や悩みを抱えている早産児ご家族は9割超。「自責の気持ち」と「今後への不安」が多く語られた。

●一方、一般のご家族では7割弱が早産児ご家族がどのようなことで悩んでいるかを知らず、周囲の人もどのように声がけすれば良いか分からず戸惑う状況があることが示唆された。

●約6割の早産児ご家族が、悪気がないとわかっていても、周囲の理解や配慮不足を感じたり、言葉や行動で傷ついた経験があった。また、各種手続きや支援の窓口となる自治体、子どもを預ける幼稚園や保育園においても、早産児とそのご家族への理解不足を感じる結果となった。

●早産児ご家族は、その子のペースで成長していることへの気づきや、その子のありのままを肯定するような言葉、またご家族の頑張りへの理解・ねぎらいの声がけなどが嬉しい経験につながっている。

●行政や地域の支援においては、約6割の早産児ご家族が不十分だと感じた経験があり、具体的には、保育支援や育休期間の配慮など親が職場復帰をしていくための支援の不十分さや、そもそもの情報不足、知識不足を指摘する声があがった。

>>アンケート結果詳細は後述の「アンケートの詳細」をご参照ください。

  • 「#ちいさな産声サポートプロジェクト展」

    初日の16日にオープニングセレモニーを開催

 池袋・サンシャインシティ噴水広場にて明日17日まで「#ちいさな産声サポートプロジェクト展 ~知ってほしい、小さく早く生まれた赤ちゃん家族の物語~」を開催しています。初日である本日16日(木)にはオープニングセレモニーとして、早産児を取り巻く課題をテーマに、慶應義塾大学医学部小児科 有光威志先生と一般社団法人 山王教育研究所 臨床心理士 橋本洋子先生、さらに早産を経験したご家族2名をお迎えし、トークセッションを行いました。

 まず有光先生から早産児に関する基礎情報についてお話いただきました。その後、早産児ご家族から、早産を実際に経験して感じたこと、NICU入院中の過ごし方などついてお話をいただきました。「子どもを抱くということが当たり前にはできなかったので、しばらくは保育器の隣から話しかけていたが、初めて抱っこできた時のことは今でも忘れられない」と語るご家族に対し、有光先生が「NICUではご家族と赤ちゃんのふれあいを通して関係を深めることが重要と考えている。」と、NICUで行われるふれあいのケアについてお話しいただきました。

 また、ご家族が早産で生まれた子どもを育てる中で印象に残っている出来事として「他の赤ちゃんを見て、大きさや発育の違いに驚き、悩むこともあった。」というご経験について語りました。橋本先生からは、「NICU退院後、他のお子さんと比べてしまうことがあったり、成長曲線などのスタンダードが示されたりすると、不安が膨らんでしまうことがある。 その不安を受け止め、退院後も継続したフォローアップが求められていると思う。」とお話しいただきました。

 イベントの最後は「赤ちゃんにはそれぞれのペースでの成長があり、それをご家族や周囲の人々、そして社会全体で優しく見守っていけるといいですよね」と締めくくられました。

 イベント内の展示ブースでは、展示のメインとなる、小さく早く生まれた赤ちゃんの成長をたどった4組のご家族の写真展を来場者の方がじっくりご覧になっていました。

<オンラインでも参加できる! 全国から募集した「小さく早く生まれた赤ちゃんの写真展」は12月末まで開催>

 イベントにお越しいただけない方にもご参加・ご覧いただける、小さく早く生まれた赤ちゃんとご家族のオンライン写真展を11月20日(月)から12月27日(水)まで開催しています。期間中は、早産児とそのご家族のお写真をウェブ上でご覧いただけます。詳細は以下をご確認ください。

■小さく早く生まれた赤ちゃんとご家族のオンライン写真展

公開期間:11月20日(月)~12月27日(水)

URL:https://www.pigeon.co.jp/csr/tinycry/littlebabyphoto/

小さな赤ちゃんのおむつ交換・お世話体験小さな赤ちゃんのおむつ交換・お世話体験

小さく早く生まれた赤ちゃん人形・抱っこ体験コーナー小さく早く生まれた赤ちゃん人形・抱っこ体験コーナー

  • アンケートの詳細

■早産児ご家族の9割が、早産で生まれたことによる不安や悩みを抱えている

 早産児ご家族に対して、早産で出産したことにより不安や悩みを感じたことがあったかを尋ねた質問では、「よくある(よくあった)」(63.5%)と回答した人が6割以上に上り、「時々ある(時々あった)」(32.5%)を合わせると9割以上のご家族が何かしらの不安や悩みを感じていることがわかりました。具体的には、お母さんは早く産んでしまったことへの「自責」の気持ちに苛まれ、また、早産で生まれた赤ちゃんの発育や発達などについて「今後への不安」を抱いていることがわかりました。

■早産児ご家族がどのようなことで悩んでいるかを周りは具体的に知らない

 一般のご家族に対して、早産児ご家族が子育ての中で具体的にどのようなことで悩んでいるか知っているか?を聞いた質問では、「知らない」(19.5%)と「あまり知らない」(45.1%)を合わせて6割以上が知らないという結果になりました。そもそも早産児ご家族と接する機会が少ないこともあり、実際の交流の場面において「自分の子より低い月齢と思って声をかけたら同じ月齢だったとき、戸惑ってしまった経験がある。」「早産だから発達ゆっくりなのが気になる…と言われている方がいて、一緒に見守っていこう!と声をかけたが、どの答えが正解かわからず戸惑いました。」など、早産児について知る機会が少なく、知らないがゆえに、戸惑ってしまう場合があることもわかりました。

■悪気がないとわかっていても周囲との何気ない日常会話で傷ついた経験がある早産児ご家族は約6割

 また早産児ご家族に、周囲の理解や配慮が不足していると感じたり、周囲の言動により傷ついたりした経験の有無を聞いたところ、「よくある(よくあった)」(28.9%)「時々ある(時々あった)」(30.9%)の回答は全体の約6割を占めていました。具体的には、悪気はない「小さいね」と言う言葉や、励ますつもりで発した「大丈夫」、早産で生まれてしまい「かわいそう」など何気ない日常会話の中で、不安や自責の念が強いお母さんは傷つく場合があることがわかりました。また退院後、社会生活を送る中では、正期産の赤ちゃんの発育・発達を前提とした発言によって不安や傷つきを抱いていました。

 さらに、各種手続きや支援の窓口となる自治体、子どもを預ける幼稚園や保育園においても、早産児とそのご家族への理解不足からくる発言や対応があったとのコメントも数多く見受けられました。

■より赤ちゃん一人ひとりの多様な成長を認め、理解していく必要性がある。(例:修正月齢)

 早産児ご家族は、医師との会話や子どもの成長を見守る中で、発育や発達の目安の1つとして「修正月齢」という考え方を用います。これは実際に生まれた日(誕生日)ではなく、出産予定日を基準にして早産児の発育発達や成長を見ていくもので、今回のアンケートでも早産児ご家族の8割以上が母子手帳などで成長の目安を測る際に、修正月齢を基準に確認をしていることがわかりました。

 一方で、早産児の発育発達について、出産予定日を基準にすることがあることを知らない一般のご家族の割合は約半数という結果となり、早産の赤ちゃんの発育発達についての認知度は高いとはいえない状況です。

■早産児ご家族が嬉しかったことは、その子のペースで成長していることへの気づきや、その子のありのままを肯定するような言葉、またご家族の頑張りへの理解・ねぎらいの声がけ

 様々な場面で不安や傷つく経験もある早産児ご家族ですが、一方で周囲からの温かい言葉に支えられたといったことも多くの当事者ご家族が経験されていることが明らかになりました。特に、その子自身の成長を見て一緒に喜んでくれていると感じる言葉や、その子のありのままを肯定するような言葉、またご家族の頑張りへの理解・ねぎらいの言葉を嬉しく感じているご家族の声があがっています。

■行政や地域のサポートはまだまだ追いついておらず、情報不足や知識不足を指摘する声も

 「早産児」に対する行政や地域のサポートについては、約6割の早産児ご家族が、何かしら不十分だと感じたことがあるという結果となりました。

 具体的には、子どもの保育や就学についてや早産児ご家族の就業制度について、また育児支援制度がそれぞれの早産児の成長状況に柔軟に対応できていないといった状況、情報が少なくそもそもどこに相談したらいいのかが分からない等、支援を求める声が上がっています。

【今回の調査を受けてのコメント】

慶應義塾大学医学部小児科・日本NICU家族会機構(JOIN)理事 有光先生

早産児の親は自責の念や将来の不安を抱えています。一方で、早産でない子どもの家族の多くは、早産児の家族の悩みを知りません。早産児の家族は、日常の中で「赤ちゃん小さいね」という言葉や「正期産児との比較」に傷ついています。頼りにしたい行政や地域でも、早産児の知識や理解が不足していることがあります。親の復職支援や早産児の保育園の受け入れについて柔軟な対応が求められています。多くの方に早産児や周産期医療を受けたこどもと家族のことを良く知ってもらい理解してもらうことが重要です。すべての子どもと家族が可能性を最大限に発揮し、自分らしく生き生きと暮らせる社会になって欲しいと願っています。

一般社団法人 山王教育研究所 臨床心理士 日本周産期精神保健研究会 前副理事長 橋本先生

WEBアンケートですが、有効回答数249名の調査結果は貴重なもので、関心の高さが伺えます。

早産児のご家族の周囲にいる我々に大事なことは、色々なことがありながら早産の赤ちゃんが「ここまで育ってきた」こと、ご家族が「ここまで育ててこられた」ことへの想像力とリスペクトであると思います。そこから温かなまなざしと、お子さんを愛でる言葉が生まれます。温かなまなざしに包まれながら、ご家族は少しずつ心を開いてくださり、言葉がこぼれてくるかもしれません。そんな時は、そのままお聴きすることが大切だと思います。そして、私でしたらお子さん自身に「がんばってきたね」、ご家族に「がんばっていらっしゃいますね」と伝えたいかなと思います。

【アンケートの概要】

❶早産児ご家族向けアンケート

調査対象者 :早産を経験されたご家族

有効回答数 :249名

調査期間  :2023年10月3日~17日

調査方法  :WEBアンケート

❷一般ご家族向けアンケート  

調査対象者 :早産経験がないご家族(妊婦を含む)

有効回答数 :82名

調査期間  :2023年10月10日~17日

調査方法  :WEBアンケート

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