MEDEL GALLERY SHUのプレスリリース
大矢は金沢美術工芸大学油画専攻を卒業した2021年に、TURNER AWARD 2020大賞受賞し、現在注目を集めている新進アーティストの1人です。
“大矢一穂の作品は、物語の瞬間を捉えるべく、絵具を滑らせていく”
大矢は、日常に起きる凡庸な人々の営みから聖書に住む聖人の世界まで、様々なレベルで引き起こされる出来事とその出来事に翻弄される人間の感情をカンバスにとどめています。
出来事が起こる瞬間とは?アダムとエバが知恵の実のリンゴを持って食べようと、まさに楽園から追放されるその瞬間、また兵士にキリストを捕縛させるサインとして、裏切り者ユダがキリストに接吻しようとする瞬間、さらには魚を取る民であったペテロらが漁網に魚が溢れる奇跡に遭い、その時遠岸に佇むキリストを見た瞬間…
そのような劇的に断ぜられた場面を、ある作品では静粛に大きな筆で描き、ある作品では多彩で激しい筆触で塗り固める。このような大矢の筆触のあり方は、物語の登場人物の感情描写であると同時に、画家自身の感情表出となっています。
そしてポートレートの女性の眼差しの先には物語が潜んでいる。彼女たちは聖書に思いを馳せつつ、その壮大な物語が紡ぎ出す瞬間を現代のこの瞬間に転化し、明日の自分の在り方を問う切実で強い視線を投げかけます。
また静物画と思われる小作品にも、物語の片鱗が投影され、人間の罪を贖う羊や婚礼の儀式で使われるティアラや銀食器にも象徴的な意味が込められています。生涯の約束でもあり神との契約である結婚のテーマは、大矢によって現代の営みと大きな物語とを繋ぐ出来事へと昇華されていきます。
このように大矢が描く全ての人物、そして全ての事物は彼女のイマジネーションによって飛翔し、絵画の世界で別次元のストーリーを語り始める独自なる作品の数々を、是非ご覧ください。
エヴァ(イヴとも)は旧約聖書内で、最初の人間アダムのつがいとして作り出されたとされる女性です。聖書の内容をもとにすれば、彼女は全人類の母であり、また人類史の最初の作り手とも言えるでしょう。
長く女性は歴史の表舞台では活躍できない時代が続きましたが、エバをはじめとして、星の数ほど多くの女性が一人一人、人類の物語を紡いできました。私自身その末端として自分自身の見たもの、感じたことを絵画にして、物語っているつもりです。
今回の展示で、現代の日本を生きる女性として、私の感じた、歴史に息づく女性の存在、『エバの呼吸』をみなさんにも感じていただければと思います。
大矢一穂
私の作品は、人間関係と、その社会の中で起こる物語を描いています。抽象的な作品、具象的な作品どちらを通しても、そこには常に人間の存在や物語が存在しています。その物語を、私の手で絵画として紡ぎ出すことが私の目標です。
物語を紡ぐということは、かなり人の精神的・思念的な部分に依存している行為ですが、反面、絵を描くという行為はかなり身体的なものではないでしょうか。目で見て、手を、体を大きく動かしていく中で作品は生まれていきます。絵のサイズの大きさによっては手が届かず苦労する部分もあるほどです。
このように精神・身体、両面によって紡がれる絵画の物語であるからこそ、霊的なものと肉体的なものを併せ持つ、まさに『人間の物語』として、絵画は機能するでしょう。
■プロフィール
1997年 愛知県生まれ
2017年 金沢美術工芸大学 入学
2019年 連続展示、浮遊する変体Vol.1 個展「Bite a picture」アートベース石引
2020年 グループ展「KCoA SUPPORT PROJECT展」 金沢アートグミ
2021年 金沢美術工芸大学 油画専攻 卒業、TURNER AWARD 2020 大賞受賞
2022年 TURNER AWARD 2020 大賞受賞者展示
個展「円環からの逸脱」TURNER GALLERY
グループ展「EYES」MEDEL GALLERY SHU
グループ展「GINZA ART FESTA」松屋銀座
個展「エヴァの呼吸」MEDEL GALLERY SHU
MEDEL GALLERY SHU
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